自然食屋のチャレンジ

NOBUO NAKAGAWA

2017.04.10

「自然食屋が、冷凍菓子を売るなんて」という批判覚悟で始めたこのジェラート作り。実際に、そのように批判されたこともあります。

この際、なぜ、私がジェラートを始めたのかについて、きちんと表明しておきます。

日本の自然食業界は不況といっていいでしょう。自然食もどきの、自然食風が幅をきかせてきたという事情もありますが、私がもっとも危機感を抱いているのは、自然食品店に出入りするお客様がどんどん高齢化しているという状況です。

はっきりいって、自然食のお店は誰にでも入りやすいでしょうか? 入りたくなる雰囲気がありますか? この世界では、「自然食を食べる人は意識が高い、もしくは低い」「陰陽が分からないなんて、世界が見えない」「農薬や放射能について理解がないのはいけない」という言葉がよく聞かれます。確かに正論ではありますが、私は正しいか間違っているかだけで世界を掌握する気持ちはありません。

正しいか、間違っているかは常に相対的なもので、「正しい」ことがぶつかり合えば、結果的に戦争になるわけです。正しいから評価される、間違っているから評価されないというほどこの世界は単純には出来上がっておらず、ましてや入りにくさすらも、「入りにくいから、関係のないひとがやってこない」という、ある種あきらめにも似たムードが漂っています。

違うパターンでは、自然食お菓子で素材が生きたおいしいものは確かにありますが、とうてい一般の人が食べても「おいしい!」と叫んでもらえるものは、いったいどれだけあるでしょうか。氷結晶が大きすぎじゃりじゃりのアイスクリーム、塩味しかしないクッキー、アレルギーだからと子どもがいやがるとんでもないケーキなど、枚挙にいとまがありません。私が高いお金を払って食べた「玄米ソフトクリーム」というものなど、びっくりするほどの完成度の低さで、米の特性が生きていない、米以外の素材が満載どころか、途中で捨てたくなるほどまずいのです。こういうものが「意識の高いお菓子」として並んでいる状態では、ますます一般の方、ましてや若者はそこに行こうともしてくれません。

理念を押し通すことは、生き方としては正しいのかもしれませんが、私にはある意味努力不足にも写ります。ここまでお話ししてきたことは、他社への批判ではありません。私もそのドクマにいた一人だからです。

反省を込めて申し上げます。一般の人が来ても楽しい、若者が大切なお小遣いを使いたくなる、自然食を食べている人もまたいきたくなる店、そしてそんな食べものやお菓子。少しでも安全な素材で、かといって安全や理屈ばかりに固執せず、ときに自由で、ときに芸術的、そして溢れ出るパッションが感じられる店があってもいいのではないでしょうか。

私は、そんな場所を作りたいと思いました。

今日の時点で、まだ10日しか経っていませんが、考えていたことは間違っていなかったと思います。

小さな可愛くて、とっても愛しい子どもたちが、目を輝かせてくれる。
お母さん、また来たいよと母の手をひいてやってきてくれる。
ここのじゃないとイヤだとお父さんにいってくれる。
中高生たちが、友だち連れでやってきてくれて、楽しい話しに弾んでくれている。
ヴィーガンやマクロビオティックの教室に通ってはいるけれど、たまには濃厚なミルクを使ったフレーバーをたべてほっとしてくださる。
アレルギーでアイスクリームは食べられないというお子さんをお持ちのご両親が、こんなにおいしくて、でも我が子が食べられるなんてと遠方から来て下さる。
プレマさんがやるんだからといって、新幹線に乗ってきて下さる。
ここでジェラート食べると身体が暖かくなると喜んで下さる。

・・・それは、全部、私たちが丹精込めて開発し、伝えようと、売ろうとしている自然食品の棚の前で起きていることです。

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こんなに嬉しいことが、たくさんやってくるなんて、こんなに素晴らしいことが他にあるのでしょうか。

自然食屋に足りない、とっても大切な要素は、わくわくする気持ちじゃないでしょうか。

体に良いから、健康が大切だからといいながら、もっと大切なものを犠牲にしていないでしょうか。食による病気治しはもちろん大切で、崇高な仕事です。同じように、心の薬を提供できればと思っているのが、私がこのお仕え事に他ならぬ情熱を注ぐ理由でもあるのです。

自戒を込めて。

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1分でわかる
プレマルシェ・ジェラテリア

  • 自然食屋が、そのノウハウの全てを注ぎ込んだ京都のジェラート店
  • イタリアジェラート協会 国際コンテスト3年連続複数部門受賞
  • 正統イタリアン・ジェラートでありながら、和素材を生かしている
  • 機能素材やスーパーフードを多用し、罪悪感ゼロで楽しめる
  • 日本最大級のヴィーガン、ノンミルクジェラートの品揃え
  • 安価で味の粗いサトウキビ由来の白砂糖は一切不使用
  • 合成乳化剤・合成安定剤、合成食品添加物は一切不使用
  • 主に外国人から特別に高い評価を受け、行列になる日もある
  • チーフ・ジェラティエーレ(ジェラート職人)は中川信男
  • 前代未聞の「ジェラートのすべてが米素材100%」も各種開発
  • 「食べたら血流が増加する」という公的試験機関データあり
  • 京都でフードバリアを超えるというプロジェクトを立ち上げ
    Beyond “Food barrier”! 参照 )
  • 私たちが作るジェラートは「心の薬である」と真剣に希求