ミルク入りか、ヴィーガンか

NOBUO NAKAGAWA

2017.06.29

私は、ある素材をジェラートにしようと試みるとき、基本的にはミルク入りとヴィーガン(完全動物性ゼロ)を両方試作します。

素材によって、ミルクが引き立てるもの、殺してしまうものがあり、日本のようにジェラテリアの多くが牛乳産業をベースに出来上がっている場合には、こういった両刀遣いはとても考えられない狂った行為ともいえるでしょう。

プレマルシェ・ジェラテリアのほうじ茶フレーバーは動物性素材ゼロ(ただし、この場合はミャンマー産のひまわり蜂蜜を使っています)で仕立てていますが、詳しい事情は>>こちら明らかにミルク入りだとその素材の個性が弱まってしまう素材が存在します。

多くの場合、ヴィーガンは専門店となっており、お店全体がすべてヴィーガン素材だけでできたスイーツや料理というのが標準的ですが、その特質上、「動物性素材を店に持ち込むなんて」という発想で経営されていると思いますので、基本そのパターンになります。それはそれで重要なことかと思います。

私の場合は、フードバリアをなくしたい、誰もが笑顔になれる場所にしたいという基本線でやっていますので、たとえばご家族の一部の方がヴィーガンで、それ以外の方は何でも食べます、という実はよくあるパターンでも、皆さんで好きなものを召し上がっていただいて、誰も損した気分にならない、ということもまた大切だと考えています。これは、お子さんがアレルギーでご両親はそうではない、というケースも同様で、いろいろな変則的なパターンがありますが、いずれにしても「私は何でも食べます」という方にも、「え!ミルクどころか動物性なしでもこんなにおいしいの!」と言っていただけることが、ヴィーガンである人をヴィーガンでない人が理解する一助にもなると信じていますので、両方ある、否、いろいろなパターンがある店というのも貴重ではないでしょうか。

「砂糖なし」も、当店にはあり、代替糖を使うパターンや、甜菜糖を使っているジェラートもあります。卵を使っている数種類もあれば、卵どころか、蜂蜜すらも入れないジェラートもあります。どんな人でも笑顔になりえるという、途方もない夢を追いかけているのです。

さて、この話は理念の話しですが、そんなに面倒くさいことを言わなくても「絶対にこれはミルク入りにしたら素材を殺してしまう」というパターンを確認するために、私は両方作ってみるのです。両方食べてみて「これはどう考えても、ミルクを使わない方がおいしいわ」という素材を確認して、「もうこれは完全ヴィーガンで行く」と決めます。先入観ではなく、実際の官能でそう決めるのです。私自身がヴィーガンではないのを不満に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、この比較検討ができて、ヴィーガンのほうが結局ミルク入りよりおいしいという事実をもって証明できるのは、私がヴィーガンではなく、かつヴィーガンということについてよく理解しているから、と解釈していただけるとありがたいです。

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その典型的な一つがココナッツ味です。まず、私の場合は日本で安定的に入手可能なココナッツミルクやココナッツクリームを合計6種類用意しました。栄養成分的な特性をイタリアンジェラートの標準的なパラメーターに適合させて濃度を調整し、ほぼ同じ条件で試作する、または素材を直接食べてみます。そして絞り込みをすすめ、口に入れた瞬間のアロマやテクスチャー、食べている途中のアロマや滑らかさ、さらに口の中での消え方などまで比較検討し、素材を絞り込みます。このプロセスはヴィーガン・ヘンプフレーバー、ヴィーガン・ヴィーガンオリーブオイルフレーバーなどでもかなり多くのパターンで繰り返しましたが、今回もそのパターンです。

こんなに面倒くさいことをして、と思われるかもしれませんが、同じ名前で流通している素材でも、全く違うのです。特にココナッツの場合には、ココナッツ特有の渋みというか、後味があるのですが、多くの日本人はこの感じが好きではないのです。日本人はそもそも熱帯育ちではありませんから、陰性を示す特有の渋みが苦手なことは当然のことでもあります。タイやインド、ネパールで過ごした時間が長い私の場合も同じで、多くの人に好まれるのは、このココナッツらしさの渋みが少なく、しかもクリーミーなものに限られるので、絞り込みも容易です。

その結果「タイ産」の、オーガニック認証済みのココナッツがベストと判断、ヴィーガン仕様で織り出したのが当店の「オーガニック・ココナッツ タイランド風」です。

今日、終日店頭におり、ざっと20人くらいの方にこのフレーバーのご試食をしていただき、半数の方は本オーダーのアイテムになりました。ヴィーガンの方はもっと高い確率ですし、ヴィーガンでない方も「おいしい~!」とため息を漏らしていただきました。

ヴィーガンだったらきっとおいしくないだろう、という先入観を完全に払拭できる味だけを、プレマルシェ・ジェラテリアではヴィーガン仕様でご提供します。

それが、より動物性素材や食品添加物、合成フレーバー、調合済ミックスだけに偏重する、現在のジェラートやアイスクリーム、洋菓子の世界を根本からじわじわと覆していくきっかけになると信じているからです。マイノリティがマジョリティとは言わないまでも、かなりの比率にまで精進発祥の国、日本も育っていけるようにと念じて。

1分でわかる
プレマルシェ・ジェラテリア

  • 自然食屋が、そのノウハウの全てを注ぎ込んだ京都のジェラート店
  • イタリアジェラート協会 国際コンテスト3年連続複数部門受賞
  • 正統イタリアン・ジェラートでありながら、和素材を生かしている
  • 機能素材やスーパーフードを多用し、罪悪感ゼロで楽しめる
  • 日本最大級のヴィーガン、ノンミルクジェラートの品揃え
  • 安価で味の粗いサトウキビ由来の白砂糖は一切不使用
  • 合成乳化剤・合成安定剤、合成食品添加物は一切不使用
  • 主に外国人から特別に高い評価を受け、行列になる日もある
  • チーフ・ジェラティエーレ(ジェラート職人)は中川信男
  • 前代未聞の「ジェラートのすべてが米素材100%」も各種開発
  • 「食べたら血流が増加する」という公的試験機関データあり
  • 京都でフードバリアを超えるというプロジェクトを立ち上げ
    Beyond “Food barrier”! 参照 )
  • 私たちが作るジェラートは「心の薬である」と真剣に希求